とにかく患者さんのために何とかしなくてはいけないですから、
限られた情報の中、勇気を振り絞って診療を続けました。
掛谷先生は臨床医として、新型コロナ感染症の患者と向き合われたと聞きました。流行当初の医療現場は、どのような状況だったのでしょうか。
2020年の3月下旬あたりから、日本でも新型コロナウイルス感染症が急増しましたよね。僕は臨床医として、日々医療現場の最前線で働いていますから、新型コロナの恐ろしさは肌で実感しました。
発熱した患者さんが来院されてお話を伺うと、どうも新型コロナに感染しているらしい。感染が確認されれば保健所に連絡するのですが、その頃は電話すると3日間待てという返答しかない。病院に連絡しても受け入れを拒否されてしまう。最初は、本当に困りましたね。
とは言っても、患者さんのために何とかしなくてはいけないですから、勇気を振り絞って診療しました。やっぱり怖いですよ、新型コロナは。その頃はあまりにも情報が少なく、実体がわからないですし。症状のある患者さんには、最初に採血をして、CT検査を行いました。それで大体、判断がつきます。それから、パルスオキシメーターという装置を使って酸素濃度を測ったり、少しでも症状を和らげるために補水したり、抗生剤を点滴したり、解熱剤を使うなど、とにかく患者さんの症状を改善する努力を続けました。
ところが4月の中旬あたりになると、患者さんが一気に増えて、大変な状態です。とてもじゃないですが、対応しきれなくなってしまいました。それで色々と手を尽くして、PCR検査や抗体検査を正確に行える施設を見つけ、検査態勢を整えました。
まあ、そんな具合で、4月いっぱいは懸命に患者の対応をしていたのですが、少しずつ受入先が決まっていき、保健所も本来の機能を回復して、患者さんに安心していただけるようになりました。
今回非常に威力を発揮したのが、5-アミノレブリン酸(5-ALA)という天然のアミノ酸です。コロナが流行する1年前に、インフルエンザやノロウイルスが猛威をふるった時に親しい友人に試したのですが、インフルエンザのみならず、嘔吐下痢症の時などに劇的な効果が見られました。ワクチンも薬もない状況でしたから、もう、藁にもすがる思いで、コロナの患者さんに服用していただきました。ウイルスには効くという確信はありましたが、医薬品じゃないので新型コロナに効くとは言えないのですよ。
それで、使用に際してはインフォームドコンセントという形をとり、患者さんからは書面で了解をいただきました。有効な手段がない期間は、ほとんどこの5-ALAに頼っての対応をしましたね。
内視鏡検査の第一人者。1958年、大分県生まれ。82年、宮崎医科大学卒業。消化器がんの研究で大分医科大学にて医学博士号を取得。その後、米国ニューヨークのベス・イスラエル病院、およびアルバート・アインシュタイン医科大学に留学。米国では新谷弘実教授に師事し、そのテクニックを短期間で身につけ、新谷式内視鏡検査の最高位に与えられるマスターの称号を、新谷弘実教授より授与される。以後、年間5000~10000例、通算で20万例を超える胃腸内視鏡検査を実施。食道・胃・大腸内視鏡検査のほか、ポリープやがんの切除手術を無事故で行い、患者からは「苦しさ、痛み」がない検査として好評を得ている。特に食道がんや胃がん・大腸がんでは、ほとんどすべてを数ミリ単位の大きさで発見し、完治させている。このほか、他科のすぐれた医師とも連携しつつ、高度先進的な医学の臨床への適用に注力する。日本内視鏡外科学会評議員。前ニューヨーク新谷クリニック客員顧問。