
新型コロナに限らず、感染症対策の基本は徹底した隔離を行うこと。
今回はそうした当たり前の対応が、上手くできなかった。

福島先生は、手術や講演で休むことなく世界各国を駆け巡っていらっしゃいますが、今回のコロナ渦においては、どのような状況だったのでしょうか?
いつもなら1年365日、1週間に8日働く勢いで世界を飛び回っていますけど、コロナ渦になってからは、もっぱら米国と日本を行き来する毎日でした。
普段の年末年始であれば、暮れにASEAN諸国に出向いて教育コースをみっちりやって、元旦に帰国して、浅草寺と靖国神社に参拝して「今年も福島をよろしく、合併症ゼロでいきますから」とお祈りするのですけどね。
ご存知の通り、米国は世界最大の感染国ですから、深刻さは日本の比じゃない。昨年の3月にはロックダウン(都市封鎖)もあったし、とうとう米国全体のコロナの死亡者は、100年前に大流行したあのスペイン風邪の死亡者数を超えてしまいました。
米国では、ワクチン接種は義務化されていて、国民全員がワクチン接種は当たり前。バイデン政権は、発足してから2ヶ月で1億回の接種を突破して、就任3ヶ月で2億回を超える猛スピードで対策を行いました。でも、その後はデルタ株が蔓延して、新たな「パンデミック期」に突入してしまった。デルタ株は感染力が強いから、新規感染者が1日に15万人ぐらいになったり、ピーク時には入院患者数が10万人を突破したり、1日の死亡者が2,000人を上回るほどに悪化した。
それぐらい、新型コロナは恐ろしい病気です。
だから、新型コロナにかかっても、軽症までに止めておかないと、本当に怖いですよ。重症化したら、治っても匂いがわからない、味覚が回復しない。息苦しかったり、「体がだるい」「何もする気が起きない」といった倦怠感がひどくなる。記憶障害や認知症のようになる場合もあるし、困るのは血管系ですね。新型コロナに感染すると、過剰な炎症反応によって血管内で凝固異常が生じて、心筋梗塞や脳梗塞などを発症しやすくなるのです。メンタルの面でもかなり辛くなるし、まともに仕事ができなくなってしまう人も大勢います。
私も「コロナにかかってはダメですよ」と事あることに訴えるのですが、若い世代の中には「僕ら若いし、かかっても別にいいかな」なんて言う人がいる。
いやいや、とんでもない話。あなた自身は罹患してもいいかもしれないけれど、感染症は他の人にうつす病気。だからこそ、新型コロナは恐ろしいのです。
1942年、東京都生まれ。68年に東京大学医学部を卒業。その後、同大学医学部附属病院脳神経外科臨床・研究医員に。研修医1年目にして世界初の脳内視鏡、手術用ファイバーエンドスコープを開発し、世界の注目を浴びる。80年から三井記念病院脳神経外科部長を勤め、頭蓋底の「鍵穴手術法(キーホールオペレーション)」を確立。89年~90年、ロサンゼルスUCLA脳神経外科にて頭蓋底手術プログラムを開設。91年、南カリフォルニア大学医療センター脳神経外科教授に就任し、米国永住を決意。手術や講義のために世界を駆け巡りながら、後進のため頭蓋底手術実習セミナーを開催。98年、カロライナ頭蓋底手術センター所長およびデューク大学脳神経外科教授に就任。現在、カロライナ脳神経研究所、デューク大学とウエスト・ヴァージニア大学の教授を勤め、脳神経外科顕微鏡手術の「全米トップの権威」と評される。スウェーデンのカロリンスカ研究所、フランス・マルセイユ大学の教授、イタリア・ローマ大学、ドイツ・フランクフルト大学の客員教授も兼任する。